A:純血の竜族 ファン・アイル
宇宙生物など存在しないとワタシを罵る者は、いますぐドラヴァニアに向かい、ドラゴンに食われることで、身を以て己の愚かさを懺悔するべきだ!知っての通り、ドラゴンの始祖たるミドガルズオルムは、太古の昔に我らが星へと渡ってきた異星の生物なのだから……!
おおっと、それを発表したのはキミたち「暁」だったな!ともかくだ、これが事実であると証明すれば、ワタシを学会から追放した者どもも、泡を吹くに違いあるまい!つまり、竜星に棲まうドラゴンを倒し、証拠を得れば良いのだ!
~クラン・セントリオの手配書より
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ショートショートエオルゼア冒険譚
教授はすこぶるご機嫌斜めだった。シャーレアン大学の講堂に呼び出されたあたし達が到着してからも教授は居並ぶお偉いさん前にブツブツ独り言を言ったり、座っても落ち着きなく手を動かしていた。
暁の血盟がミドガルズオルムの出自について発表したのは近年の話だ。その話については実際にミドガルズオルムの子である七大天竜の一翼からヒアリングしたというのだから信憑性は高い。その内容は、
「ミドガルズオルムの母星である竜星は資源が枯渇した惑星アルファトロンからの侵略を受け戦争状態にあった。惑星滅亡の危機に際し、ミドガルズオルムは一縷の希望を求めて母星を後にする。そしてたどり着いたのがアーテリスだという。ミドガルズオルムはアーテリスの環境に自分が適応できることを確かめると7翼の大天竜を生み出し、自らはモードゥナの南にある銀泪湖に棲み付き主となった。
後年ミドガルズオルムはガレマール帝国エオルゼア侵攻の折、銀泪湖の守り神としてエオルゼア勢に加勢し、ガレマール帝国空軍旗艦の飛行戦艦と戦いそれを道連れに湖の真ん中に墜落した。銀泪湖の真ん中にそそり立つ遺体の絡みついた飛行戦艦は黙約の塔とよばれ、今もその姿が確認できる」というものだ。
その情報が公式に発表されてなお、学会上層部には頑なに「宇宙生物は存在しない」と言い張る者がいて、教授は学会に戻れないでいる。そのため教授はあたし達を使い、躍起になって研究を続けたのだ。
教授は今回までの成果や研究を4部作から成る論文にして発表。学会ではそれを受け、今日シャーレアン大学の講堂で研究成果の審査を行い学会に戻れるかどうか、その結果が伝えられることになっていた…はずなのだが、途中から入場したため、今どうなっているのか分からない。だが、少なくとも教授の様子では思わしくない状況になっているのは間違いない。それはあたし達にとっても少し意外な事だった。
さっき言った暁の血盟の発表には数人のシャーレアンの賢人が関与している。それだけにシャーレアン大学を中心とする学会員たちは仲間の賢人の意見にも忖度して教授の論文を好意的に受けとるとタカを括っていた。
だが実際に蓋を開けてみると今だに「宇宙に生物は存在しない」という説に拘る上層部に教授の論文が評価されることはなかったのだ,。ここまであからさまな状況になるという事は恐らく上層部の教授たちのポッケを潤すような事情、つまり論文を否定する事が何らかの利権と絡み、いくばくかの金銭生まれているのだろう。
「機械生命体が生物か否かという点について評価されないのは致し方ないとしても、宇宙生物の存在そのものについては信ずるに値する状況的根拠があり、かつ証言もある。そういった根拠・証拠をすべからく検討もせず切り捨てるような探求心すら失った連中を私は研究者として認めない。最早あのように権威や欲得で現実にある状況までを曲げて、無視するような学会には興味も未練もない。だが、我々が命を懸けて集めた根拠や証拠まで、何の苦労もしないエセ研究者になかった事にされるのは我慢ならん」
証言台のようになった場所を早足でウロウロ歩き回りながら教授は声を荒げた。教授のイラつきも良くわかる。だから、教授の発言に対してあたしのように「命を懸けたのは貴方じゃないでしょ」などという返しは考えてはいけない。上層部の一人が話し始める。
「暁の血盟による報告は七大天竜の一翼、アジュダヤより聴取したとの事だが、全てが口頭かつ密室による聴取なため報告には疑問が残る。また、。君の提出した論文、及び証拠物品については仮説としては面白いが、そもそもの根拠に乏しい。ミドガルズオルムが竜星に住まう竜族と種を同じという根拠は?記録用ユニットの材質が未知のものであることは認めてもそれが惑星アルファトロンから来たとする根拠は?機械生命体も同じく、それがアルファトロンから来た根拠も明確ではない」
「全否定じゃない…」
あたしはなんだか頭にきて呟いた。教授は変人で迷惑な人だがその執念やひた向きさならそこに居並ぶ上層部のお偉いさんよりよっぽど真っすぐだ。教授に対する酷評はさらに10分以上続いた。
流石にすっかりしょげてしまった教授の姿を見てあたしは流石に我慢できなくなり、立ち上がると大きな声で傍聴席から教授に声を掛けた。
「教授、次の仕事よね?竜星の純血竜族とアーテリスの竜族が同種だって証明すればいいんでしょ?」
俯いていた教授がガバっと驚いた顔を上げる。
「…できるのか?」
「…どうするん?」
相方が小さな声で言った。あたしはニヤッとして言った。
「彼処に来てたのは思念だけじゃなかったでしょ?だから調べたの。あるのよ噂が、竜星の純血種の噂がね」